新卒採用で看護師として働くには、ほとんど全ての病院で目標設定が必要となります。
学生時代の病院実習でも毎日のように実習記録を書いていたと思いますが、新人看護師として働くとなるとまた違った視点での目標設定が求められます。
慣れない環境で働き始めるだけでも大変なのに、目標を立てることで悩むのは辛いですよね。
ここでは新人看護師の目標の立て方について、具体例やポイントをまとめました。
これを読めば、きっと目標設定の苦手意識が和らぐと思います。
ぜひ最後までご覧くださいね。
新人看護師の目標の具体例①技能面の目標
新人看護師が自立して業務を行えるようになるためには、看護技術の習得が不可欠です。
学生時代も教科書や演習で学んだり、一部の看護技術は病院実習で患者さんに実際に行ったことがあると思います。
習得すべき看護技術が多岐に渡る中で、どのように看護技術についての目標を立てればよいのでしょうか。
病院や配属された診療科の特徴によって、優先的に習得すべき技術は異なりますが、どこに配属されてもバイタルサイン測定の習得は早い段階で必要になります。
体温計や血圧計、パルスオキシメーターなどの基本的な医療機器の扱い方はもちろんですが、患者さんへの声かけや細やかな配慮、得られたバイタルサインデータからのアセスメントなど総合的な技術習得が求められます。
そのため、目標を立てる際は「バイタルサイン測定を行う」といった抽象的な書き方ではなく、習得状況にもよりますが「4月中にバイタルサイン測定を自立して行い、患者状態のアセスメントを行う」など、より具体的で前向きな目標がよいでしょう。
その他の技術については、どこの診療科でも清拭や入浴介助、体位交換、移送、食事介助、採血といった日常的に行う機会の多い技術から目標を立てて習得していくことになります。
看護技術の習得スケジュールや目標は、厚生労働省による「新人看護師研修における到達目標」で定められていますし、入職時にあらかじめ説明を受けることが多いので安心してくださいね。
何から目標を立てればよいか悩む場面があると思いますが、1人で悩まずに同じ部署のプリセプターや教育担当の先輩と相談しながら目標設定を行いましょう。
新人看護師の目標の具体例②管理面の目標
続いては、管理面の目標についてです。
管理面と一言で言われても、具体的にどのようなことなのか悩みますよね。
ここでは、その中でも新人看護師が目標として立てやすいものをいくつか挙げていきます。
安全管理では、院内の医療安全管理体制についての理解や、インシデントレポートの書き方といった内容が含まれます。
インシデントレポートを書かなければいけない状況は、ベテランになってもあまりいい気持ちにはなれないことが多いですが、今後の事故防止のために非常に重要なものです。
具体的な目標の記載例としては、「インシデントレポートを速やかにわかりやすく書くことができる」などがあります。
他にも、感染管理では「スタンダードプリコーションを正しく理解し実践できる」、情報管理では「プライバシーに配慮して情報収集や記録物の記載ができる」、コスト管理では「患者の状態に合わせて適切な物品の選択ができる」などがよいでしょう。
このように、言葉だけで聞くと難しい印象をもたれることが多いですが、組織の一員として働くうえで非常に重要な視点です。
新人看護師として所属する病院の一員となると、責任ある行動が求められますね。
新人看護師の目標の具体例③コミュニケーション面の目標
続いては、コミュニケーション面の目標についてです。
患者さんとのコミュニケーションはもちろんですが、家族、同僚看護師、医師などの多職種など、医療現場を取り巻く様々な人との円滑なコミュニケーションが必要となります。
コミュニケーションは看護の基本となるので、自分に合った目標を立ててコミュニケーション力を身につけていきましょう。
最初は患者さんやスタッフと話すだけでも緊張しますよね。
まずは患者さんや先輩看護師、医師など一緒に働くスタッフの名前と顔を覚え、挨拶などの基本的なマナーを習得し実践するところから始めてみましょう。
最初は「5月中に社会人として基本的な接遇マナーを習得し実践できる」など、社会人としての基本的な目標を立てるのもよいでしょう。
他に具体的な目標例としては、「患者さんの個別性に合わせたコミュニケーションがとれる」「患者さんの不安が軽減できるよう丁寧な説明や対応ができる」「先輩看護師へ報告・連絡・相談を密に行う」「医師へ必要な報告がタイムリーに行える」などもよいですね。
院内でもコミュニケーション研修が行われることが多いので、そのような研修をぜひ実際の業務に活かしてくださいね。
新人看護師の目標の具体例④自己成長面の目標
続いては、自己成長面の目標についてです。
自己成長面と一言で言っても、どのような目標を立ててよいか迷いますよね。
新人看護師は、必ず先輩看護師からの指導を受けて成長していきます。
定期的に面談を行うことが多いので、その際の心構えなどを目標にあげるのもよいでしょう。
他にも部署や院内・院外の研修、オンライン研修に参加したり、自身で教科書を読んだり、部署で経験した技術を自宅に帰って復習したりと、成長していくための方法はいくつもあります。
このような学習の方法を目標として設定するのもよいですね。
具体例としては、「先輩看護師からのフィードバックを受けて自己の課題を明確にし、その改善策を立てて実践できる」「今年度中に4つの研修に参加して業務に活かす」「病棟に多い疾患の特徴や治療方法について月に1つずつ学習する」などがあります。
自分が成長するための目標を具体的に立てていくと、やる気も出てきますね。
新人看護師の目標管理シートの例文とは?
続いては、新人看護師の目標管理シートの目標についてです。
院内目標や部署目標をもとに、自身のスキルや経験など個々に合わせて目標を設定します。
目標管理シートをもとに定期的な評価を行い、その目標が達成できたか、今後よりスキルアップしていくためにはどうしたらよいかを考えていきます。
新人看護師の目標管理シートでは、まず自立して看護業務を行えるようになるための目標を立てることが多いです。
院内のクリニカルラダーを参考にして目標を設定しましょう。
また、院内目標や部署目標も理解して目標を立てることを意識しましょう。
具体例としては、「基本的な看護技術を習得して、日勤のひとり立ちができる」「先輩看護師の助言を受けながら安全な看護を実践する」などがあげられます。
目標を設定する際は、評価方法も明確に示して客観的に評価が行えるようにすることが大切です。
目標管理シートの様式は病院ごとにさまざまなので、プリセプターなど先輩看護師と相談しながら書いていきましょう。
新人看護師の1日の目標とは?
続いては、新人看護師の1日の目標についてです。
先ほどまではなりたい自分をイメージして大きな目標を立てることについてお話していましたが、ここでは1日という短い単位でどのように目標設定をするかについてお伝えします。
最初のうちは、1日に1つの看護技術に絞って目標を設定することをおすすめします。
必ずしも立てた目標を1日で達成できるとは限らないので、その技術の習得状況に合わせて同じ目標を数日続けたり、より精度を上げた目標を設定してもよいです。
具体例としては、「全身清拭介助を先輩看護師と安全に行う」「採血を先輩看護師の見守りのもと行う」「術後1日目の患者さんの観察を行いアセスメントする」などです。
1日の始まりで、「今日はこの技術を習得しよう!」と目標を立てて動くことはとても重要ですね。
勤務終わりには、その目標が達成されたか、達成できなかった場合は何が足りなかったのかを明確にすることで、今後の課題が見えてくるはずです。
新人看護師の1カ月の目標とは?
続いては、新人看護師の1カ月の目標についてです。
最初のうちはこのように計画的に目標設定するのは難しいと思いますが、院内や部署では教育計画があらかじめ決められていますので、その計画と現在の自分の習得状況に合わせて目標を設定していきましょう。
1日の目標では1つの看護技術に絞って目標を立てましたが、1か月の目標はもう少し広い視点で設定していきます。
病院や配属された部署によって流れは異なりますが、例として時期ごとに目標をあげていきたいと思います。
入職したてから数か月は「日勤業務の流れを理解する」「受け持ち患者の優先順位を立てて業務を行う」「先輩看護師の指導を受けながら入院の受け入れ業務を行う」などです。
受け持ち患者人数が増えて少し慣れてきた時期では、「急変時に指示を受けながら行動ができる」「夜勤業務の流れを理解する」「指導を受けながら受け持ち患者の看護展開ができる」などです。
1か月の目標を立ててみると、その達成のためにどんな技術の習得や経験が必要かがわかってくると思います。
1か月の目標が達成できるよう、1日、1週間の小さな目標を立てて行動していくとさらに効果的です。
先輩と相談しながら1人前の看護師を目指していきましょう。
新人看護師の1年後の目標とは?
続いては、看護師の1年後の目標についてです。
入職時に1年後の目標を考えるのは、果てしなく遠い目標に感じますよね。
わからないことや覚えなければならないことがたくさんありすぎて、不安に感じている方も多いと思います。
ここで1年の目標の立て方を知って、ぜひ自信をもって1人前の看護師を目指してください。
厚生労働省のガイドラインや日本看護協会のラダーに沿って設定されています。
そのため、院内の新人看護師の教育計画に沿って目標を立てていけば問題ありません。
そのうえで、配属された部署の特徴や自身のなりたい看護師像などに合わせて設定していきましょう。
看護師1年目の終わり頃には、先輩看護師の助言を受けながら看護実践ができればよいと言われています。
「基本的な看護技術を全て習得して安全に実践できる」「日勤業務と夜勤業務のひとり立ちができる」など、これまでよりも大きな目標を設定しましょう。
最初はこの目標が達成できるか不安に思うことがあるかもしれませんが、1年目の終わり頃には皆さんとても大きく成長しています。
先輩看護師も頼りになる存在になっているはずなので、ぜひ自信をもって頑張ってくださいね。
新人看護師の目標を立てる際のポイント①具体性と達成可能性
ここからは、目標を立てる際のポイントについて解説していきたいと思います。
始めに、具体性と達成可能性についてです。
まず具体性についてお話していきます。
例えば、術後の看護を習得したいと思ったときに「術後の看護を行う」だけでは具体的にどのような技術を習得したいのかわかりづらいですね。
どんな手術の術後なのか、術当日や術後1日目、2~3日目、1週間後ではポイントも異なってきます。
さらには術後の合併症に絞ったり、ドレーン管理に着目したり、退院後の生活を見据えて指導ができるようになりたいなど、内容もさまざまです。
そのため、特に1日や1週間といった短い期間での目標を立てる際はとくに具体的に目標を立てるとわかりやすいでしょう。
次に達成可能性についてです。
目標を立てる際は、自分の現状でのレベルをしっかりと理解してそれに合った目標を立てることが大切です。
例えば、入職してすぐに「周術期の看護をひとり立ちして行う」は難しいですよね。
段階として、基本的な疾患や治療法、術式、周術期の看護の流れを理解し、それに必要な看護技術(バイタルサイン測定や清潔ケア、ドレーン管理、モニター管理など)を習得していく必要があります。
また、進捗を確認しやすいように「〇月までに」「〇回以上」など目標を数値化するとさらにわかりやすくなります。
目標を立てるときは、自分が達成可能かどうかをしっかりと見極めましょう。
新人看護師の目標を立てる際のポイント②段階的な設定
続いては、段階的な設定についてです。
目標設定を行うときは、まずはじめに大きな目標(1年ほど)を設定して、それを達成するための中目標(数か月から半年程度)、小目標(数日から1週間程度)を意識すると行動に移しやすいです。
例えば患者さんの受け持ちについても、最初は先輩看護師の後ろにシャドーイングで着いて学び、その後に先輩看護師とダブルで行うといったように段階を踏んでいきます。
受け持ち人数についても、最初は1人の患者さんを担当することから初めていって、少しずつ人数を増やしていきます。
勤務時間も最初は平日日勤業務、その後に休日日勤業務、日勤業務が一通りできるようになったら夜勤業務と、少しずつ業務を拡大していきます。
看護技術も日常生活援助から徐々に侵襲の高いものにあげていきます。
部署の新人看護師の教育計画を参考にしながら、段階的な目標設定を意識していきましょう。
新人看護師の目標を立てる際のポイント③現状に即した目標
続いては、現状に即した目標というポイントです。
自分が看護師としてどの程度できているのか、考えてみましょう。
難しいと感じたら、先輩看護師に相談して聞いてみるのもよいと思います。
自分の現状よりも高すぎる目標を設定してしまうと、なかなか達成が難しいですよね。
逆に、目標があまりにも低すぎてしまっては成長するチャンスを狭めてしまいます。
また、配属された部署の特徴に合わせた目標設定という視点も必要です。
例えば、手術が少ない病棟で周術期看護を最初から学ぼうとするのは難しいですよね。
認知症の高齢者が多い病棟であれば、初めのうちに認知症について理解を深める目標を立てていく必要があります。
部署で多い疾患、治療、処置などを正しく理解し、それに合わせた看護の習得を目標としましょう。
部署の新人看護師の教育計画をもとにしながら、自分が今どの程度できているのかを照らし合わせ、現状に即した目標を立てられるとよいですね。
新人看護師の目標を立てる際のポイント④評価のしやすさ
続いてのポイントは、評価のしやすさです。
上記でお伝えしたことに沿ってせっかく良い目標を立てても、正しく評価できなければ次に繋げていくことができません。
「日勤業務をひとり立ちする」という目標を立てて評価する際に、どの程度達成できているか、どこが足りないのかを明確にするためには評価基準が必要ですね。
たとえば目標を達成するための方法を10個明記したとします。
評価の際には「方法を10個以上実践し目標を達成できた」とすれば最高評価となりますし、「5個実践した」「1個しか実践できなかった」など具体的な数値をもとにすれば客観的に誰でも評価することができます。
このように、評価基準を決める際には、なるべく数値化するようにしましょう。
また、どのような状態になったら達成したとするのか、明確に示しておくことが重要です。
目標を立てるときには、なりたい自分を意識するだけでなく、評価するときの状況まで意識しておきましょう。
新人看護師の目標を立てる際のポイント⑤組織の方針との整合性
最後のポイントは、組織の方針との整合性です。
これまでお伝えしたように、なりたい自分の看護師像をもとに目標を設定することは自身のモチベーションアップにも繋がりますし、非常に大切なことだと思います。
しかし、病院という組織の一員になるのですから、その組織の方針を理解してそれに沿った目標を立てていく必要があります。
入職時は配属先の病棟での勤務前に、全体での研修を受けることが多いです。
そこで病院の特徴や看護部の理念、新人看護師の教育計画等について説明があるので、しっかりと把握しておきましょう。
配属先の部署でも、部署目標について看護師長や教育担当の先輩看護師から説明があるので、ぜひ参考にしてください。
覚えることがあって大変だな・・と思う方もいるかもしれませんが、採用された病院の一員として、一つの目標に向かって働くというはわくわくしませんか?
晴れて国家試験に合格して看護師になられたのですから、自信をもって1人前の看護師を目指してください!