小児科で働くってどんな感じかあなたはイメージできますか?「小児科に興味がある」「小児科で働いてみたい!だけど実際はどんな感じ?」と思っているあなたに私が小児科病棟に10年勤務する中で見つけた「小児科あるあるおもしろ14選!」をお伝えします。
私は小児科を特に希望したわけではなかったのですが、小児科と成人の混合病棟に配属されました。私自身、子どものことが「好き!」とか「嫌い!」とかはなかったのですが、入院する患児と関わる中で小児科っておもしろいなと思うようになりました。働く場所に悩んでいる人、小児科で働いてみたいけどどんなところかわからないという人はもしよかったら読んでみてください。
①点滴漏れがわかりにくい
乳児や幼児の手って、ぷにぷにと柔らかくて気持ちいいですよね。クリームパンみたいな可愛い手、むちむちとした腕。
病気の時にはそんなぷにぷにの手や腕に点滴をしなければならないこともあります。
子どもの手は大人の手と比べてみるとかなりむっちりしています。そのため、点滴が漏れて腫れているのかどうかとてもわかりにくいのです。
医療者として、子どもの可愛い手に点滴漏れを起こしたいなんて思う人はいないでしょう。そのため、できる限りの対策をしていてもやむなく点滴漏れを起こしてしまうことがあります。
では、なぜ点滴は漏れてしまうのでしょう?
子どもは点滴をしているからといって、大人のように安静にしていることはもちろんできません。遊んだり、手をしゃぶったり、時には点滴のチューブをひっぱってしまうこともあります。
そのため点滴がひっぱられて点滴漏れを起こしやすい状況になるのです。
点滴漏れを起こさないための工夫としては、包帯や手袋のようなカバーで保護をすることが多いです。こうすることで点滴のチューブがすぐ外れてしまったり、抜けてしまうことを防ぎます。
しかし、そのような対策を行っていても子どもは活発に動くため点滴漏れが起きてしまうのです。
では、点滴漏れが起こるとどうなるのでしょうか?
点滴が漏れるというのは、血管の外に薬液が漏れ出ていくということです。そのため、ある程度の量が漏れるとだんだんと腫れてきます。
少しの量の漏れであれば腫れはさほどではないです。しかし、長時間点滴漏れの状態を放置していると手はグローブのように腫れあがります。
そして最悪の場合には皮膚の潰瘍や壊死を起こすこともあります。そういうことが起きないように点滴中はこまやかな観察が大切です。
①点滴の挿入されている部分が点滴をしていない腕と比べて腫れていないかどうか
②痛みがないかどうか
③点滴の固定やテープのゆるみがないか
④点滴の挿入部などが血液や薬液漏れにより汚染していないか
⑤いつもと比べて機嫌が悪くないか、など
子どもが点滴をひっぱっていないか、点滴を痛がる様子がないか、点滴の固定があきらかにゆるんでいる、濡れていると気づいたときには看護師に知らせてもらえるよう説明しましょう。
小児科のナースコールがかわいい②ナースコールの内容が予想外でかわいい
「点滴が終わりました」などの用事がある時や緊急時に押すナースコール。ですが、小児科ではいつもそうとは限らないのです。
小児科でとくに多かったのは消灯後の「寝れない」「寂しい」コールです。
親御さんと離れて1人で病院のベッドで眠るのが寂しくて、ついつい押してしまうようです。
なかなか忙しい時にはずっとそばにいてあげられないこともありますが、しばらくそばで背中をトントンしてあげるとすやーと眠ってしまう姿はとてもかわいらしいです。
「ごはんたべたよー」「おやつまだー?」なんていうナースコールもよくありましたね。
子どもたちからのナースコールは大人のナースコールとはちょっとちがっていて
面白いですね!
③保育士並みの創作力
小児科の病棟では、子どもたちが少しでも楽しい時間を過ごすことができるように、可愛い動物やキャラクターを用いて飾りつけをします。
色紙や画用紙などで季節のイベントごとの飾りつけをすることで、子どもたちが入院中でも季節の行事を楽しめるようにしています。
こういった創作、飾りつけには得意不得意があるため工作が得意な看護師は工作担当になりがちです。
驚くほど上手にアニメのキャラクターを画用紙で作り上げる看護師もいます。そういう人にはぜひその力を子どもたちのためにも小児科で発揮してほしいなと思います。
私も夜勤中など勤務の合間で余裕があるときには工作していました。クリスマスの時期はツリーを率先して出してみたり、みんなで飾りつけをしたあと
クリスマスツリーやデコレーションをみて子どもが「クリスマスだー」とよろこぶ姿をみるととても癒されました。
④いろんなキャラクターグッズであふれる
子どもは周りのものをよく見ています。看護師が持っているペンや時計など少しでもキャラクターがいると「あー!」といって喜んでくれることもあります。
病気やケガで入院している子どもたちはしんどい思いをしています。また、スタッフや病院という環境そのものに対して人見知りや場所見知りをしてこわい思いをしています。
そういうときにキャラクターのついたペンやシール、小さなマスコットが活躍します。
キャラクターを見せると少し緊張が和らいだり、「○○ちゃんはアンパンマン好き?」などの会話につながり少し心を開いてくれることもありますよ。
治療を円滑に進めるためにもキャラクターグッズはとても効果的です。
子どもが一番しんどいときにはキャラクターの力も発揮されず「いやーー」と絶叫されることもあるためご注意ください。
⑤キャラクターに詳しくなる
小児科で働いていると子どもたちに「○○って知ってる~?」なんて言われることがあります。
子ども向けの番組は毎年新しい番組が始まるため、いつのまにかどんどん知らないキャラクターが増えています。
ちょっとでも子どもたちの中で流行っているキャラクターを知っていると子どもたちと話すきっかけになります。
点滴や注射のあとに貼るばんそうこうにキャラクターを描いておいて、「よくがんばったね!」といって貼ってあげると子どもはとても喜んでくれます。
最近はどんなアニメが子どもたちの中で流行ってるのかなど情報収集しておくといいですよ!
⑥子育てに役立つスキルが身に付く
小児科では新生児や乳児、幼児が多く入院しています。
そのため赤ちゃんのおむつ交換や沐浴・ミルクの調乳などを行うことも多く、自分自身に子どもがいなくてもこれらのスキルは身につきます。
また入院時には予防接種歴なども情報収集します。子どもはいつ・どんな予防接種をするのかといった知識も身につきますね!
ワクチンもたくさん受けなければいけないことはわかっていたので予防接種が受けられるようになったらすぐ予防接種の予約をとりました。
私が小児科で働いていたときは独身でしたが、今現在は1歳の子育てをしています。この仕事をしていたおかげで産後はおむつ交換や沐浴・ミルクの作り方についてはなんの不安もなかったです。
⑦子供たちの成長や発達が楽しみ
子どもの病気によっては繰り返し入院することもあります。
私も小児科病棟で勤務をしていたときに初めて出会ったときは生後1,2か月だったAちゃんがまた5か月、9か月などで入院し受け持つことがありました。
入退院を繰り返しながらAちゃんがどんどん大きくなり、できること増えたり、ミルクを飲んでいたのに、ご飯を食べるようになった姿をみてとてもうれしく思いました。
そのうちにAちゃんは入院するような状況にはならず、外来で経過観察できるようになりました。
ある日、用事があり外来へ行ったところ、偶然、Aちゃんとお母さんをみかけました。また少し大きくなったAちゃんをみることができてすごくうれしかったのを覚えています。
子どもは1日1日成長発達の過程にあります。そのため通院や入院中に毎日少しずつ大きくなっていきます。
そんな子どもの成長を見守ることができるのも小児科の看護師ならではだなと思います!
⑧季節の行事を大切にする
入院すると部屋の中で過ごすことが多くなり天気がいいのか悪いのか、外は寒いのか暑いのかもわからなくなることがあります。普段は当たり前のように感じていた季節も感じにくくなります。
子どもは入院中の1日1日も大切な成長発達の過程にあります。
そのため入院中であっても季節の行事を感じられるように小児科の病棟では季節の行事を大切にしています。
春の季節は桜。病院の敷地の中に桜の木があり、外に行けるようなら散歩をして桜を一緒に見にいくといいかもしれないですね。
お部屋から出ることが難しいならば画用紙で桜の花や木をつくって一緒に見てみたりなんかもできますよね!
夏はお祭り、秋は紅葉や運動会、冬はクリスマスパーティーなど、入院中の子どもたちが少しでも季節を感じることができるような工夫を考えてみましょう。
⑨幅広い病気や治療の知識が身に付く
私が勤務していた総合病院では新生児から中学生くらいの子どもが入院していました。病気もさまざまです。
特に多かったのは肺炎や胃腸炎などの感染症、そして検査・手術を受ける子どもたちもたくさんいました。
感染症は肺炎や胃腸炎、インフルエンザ、RSウィルス気管支炎などが多かったですね。特に冬の風邪が流行する季節になると感染症のお部屋はいつもいっぱいでした。
感染症以外では川崎病やネフローゼ症候群、生まれてからの哺乳不良などで入院してくる子どももいましたね。
検査入院は小麦や卵のアレルギー負荷試験、成長ホルモンが分泌されているかどうかを調べる成長ホルモン分泌刺激試験で入院する子どもが多かったです。
手術をする科は泌尿器科や形成外科、整形外科、耳鼻科などさまざまな科にわたります。そのため看護師は日々、学習がかかせません。
小児科の病棟ではさまざまな病気や治療を受ける子どもたちがいます。毎日コツコツ学習し、自分の知識を増やしていくといいですね。
⑩処置や検査やケアに時間がかかる
処置・検査やケアは看護師がしたい時、大人が相手なら快く受け入れてくれたとしても子どもが相手の場合はそうはいきません。
汗をかいたから体を拭こう!と言っても「いやだー」、点滴の固定がゆるんでいるから点滴が外れないようにきれいにしよう!と言っても「いやだー」、看護師が何かを言う前に「いやいやー」なんてこともしばしば。
どんなケアや処置であっても無理やり押さえつけて実施すると子どもには「こわいこと」「いやなこと」というイメージを与えてしまいます。
そのためできるだけ子どもにも受け入れてもらえるように1つずつ子どもがわかるように説明しながら実施することが望ましいです。
子どもがその子の発達に応じた説明を受けて検査や処置についての心の準備をすることをプリパレーションといいます。
プリパレーションはその子の頑張りを引き出すための関わりにつながります。
検査や処置がイメージできるように写真や模型、図、絵などを用いてその子の発達に合わせた説明をするとよいですよ。
とはいえ、いつもこのプリパレーションがうまくできるとも限りません。
子ども自身にも説明はした上で機嫌のいいときを見計らって実施するか、親御さんの協力を得ながら実施するとスムーズにできることもあります。
ただし、いまにも点滴が抜けてしまいそう、固定しなおさなければ点滴再挿入になる可能性があるような場合はどうするのか。
点滴の再挿入は子どもにとって苦痛を伴う処置です。
それを防ぐために子どもに説明し、短時間で確実に処置をすませることも場合によっては必要なこともあります。
処置やケアをする時には子どもが理解できるような言葉でわかりやすく説明し、子どもが納得した状態で実施できるのが一番です。
そして処置やケアを実施できたら「よくできたね!」「頑張ってくれてありがとう!」など子どもが頑張ってくれたことを声に出して伝えましょう。
⑪子供に癒される
けがや病気で入院している子どもたちは一番しんどい状況で入院してきます。そのため入院時はとても不機嫌であったりぐったりとしていることが多いです。
しかし、子どもは大人と比べて回復が早いため(もちろん病気にもよりますが)ピークをすぎればあっという間によくなります。
しんどい時期をすぎればごはんやおやつを食べている時、遊んでいる時にはニコニコと笑ってくれたり、看護師との関係ができれば抱っこしても嫌がらなくなるなどこちらも少しうれしくなります。
子どもは不機嫌なときには看護師が少し近づくだけで大泣きされます。そんな時はこちらもつらいですが、子どもたちのニコニコと笑っていたり、遊ぶ姿に癒しを感じます。そういうとき、小児科で働くってといいなと思います。
⑫抗生剤や点滴の使用量、投与量の計算が細かい
薬剤は基本的に体重1kgあたりで計算されます。
そのため子どもによって薬剤の投与量は当然かわってきます。1バイアル(瓶)のうちの0.5バイアルや0.25バイアルなど細かく指示が出ます。
そして、投与方法も点滴の自然な滴下ではなくシリンジポンプや輸液ポンプなどを機械を用いて決められた時間通りに投与します。
なぜならば子どもは体が小さいため投与量が多すぎたり、早すぎることで体に負荷がかかるためです。
細かくって実際にどんな感じ?と思いますよね。どんな感じなのか、例をあげてみますね。
医師からの指示でこのようなものがでることがよくあります。
スルバシリン1.5g 0.25V 生食20ml 0.5V
はじめて小児科の抗生剤投与を計算したときは頭が混乱しました。しかし、毎日繰り返しやっているとすぐなれてきます。
⑬子供や保護者とのコミュニケーションが難しい
子どもたちには年齢や発達段階に応じたコミュニケーションをとることが必要です。病気や治療、検査や処置についても子どもが理解できるような言葉や絵を用いて説明します。
また、小児科では子どもたちだけではなく子どもの保護者ともコミュニケーションをとる機会が多くあります。
保護者自身も子どもの病気がいつ治るのか、自分のせいで病気になったのではないかと不安が高まっている、長引く看病で疲労が蓄積しているなど保護者の置かれた状況もさまざまです。
危機的な状況に陥り保護者は混乱していたり、イライラとしていることもあります。
そのような状況の中で保護者とのコミュニケーションはとても難しいなと感じます。しかし、保護者の置かれた立場を理解すること、不安に感じる気持ちをまずは傾聴しましょう。
そして子どもと保護者に対して誠実に対応し、1つずつ保護者が理解できるように説明しながら信頼関係を少しずつ築く必要があります。
子どもが病気になるとご家族はとても心配し、看病でかなり疲れていることも多いです。
入院中、わからないことや不安に感じることがないか話を聞き、必要であれば医師から病状について再度説明してもらえるように調整するなど
⑭ケアしたい時に限って眠っている
検温などでお部屋へ行くと子どもが眠っていることはよくあります。
別の患者さんの用事を済ませて、またお部屋を覗いてみても眠っている。まだダメか…!と部屋の前をうろうろ。
眠っていてもできる呼吸や点滴の固定のずれがないかなどの観察を済ませて、また30分後にこよう!とタイマーをかけて退室するなんてことをよくやっていました。
小児科では付き添いをしている親御さんも一緒に眠っていることもあります。そのためケアをするタイミングはなかなか難しいです。
時間が決められている点滴や処置などその時間にどうしてもしなければならないことがあれば親御さんに説明し実施させてもらうこともあります。
点滴などは子ども自身を起こさなくてもできますしね。
入院中の子どもたちは体がしんどくて夜間になかなか眠れないことも多いです。
なので、点滴が問題ないかなどの観察や眠っている間にそっと体温を測るなどしてあとは起きた時に実施でもいいのではないかと個人的には思います。
しかし、血液製剤の投与中やアレルギーの検査などで入院していて医師から「必ず投与直後、5分後、15分後、60分後にバイタルサイン測定をしてください」などと指示が出ている時は話は別です。
これは命に関わることなのでたとえ寝ていたとしてもやらなくてはならないです。できるだけ1回で終えられるように、など工夫してやりましょう。
小児科の子どもだけではなくすべての患者さんに言えることではありますが、どんなときも自分がやろうとしていることが今すぐする必要があるのか、優先順位を考えて看護するのが重要ですね!