助産師が教える陣痛緩和方法

「産婦人科で働いている看護師だけど、陣痛が来ている産婦さんへのかかわり方が分からない」

「どうしたら陣痛の痛みを和らげてあげられるのか知りたい」

産婦人科で働く看護師さんなら、こんな思いをもったことがあるのではないでしょうか。

助産師は分娩の専門家として産婦人科で働くことが多いですが、看護師さんでも産婦人科に配属されることは多いです。

基本的にお産にかかわるのは助産師ですが、陣痛中のかかわりなどは看護師さんでもできます

今回の記事では、陣痛緩和方法について紹介します。

一つではなくいろいろな方法があるため、まずは知識として知って、実践につなげていきましょう。

方法 ポイント
呼吸法 息を長くゆっくり吐くことを意識
ラマーズ法 「ヒッ・ヒッ・フー」のリズムで呼吸
ソフロロジー法 陣痛をポジティブに考え、あぐらで呼吸に集中
マッサージ 力加減しながらおなかや腰をさする
肛門を圧迫 テニスボールやゴルフボールを活用
温める 血流を促しリラックス効果を図る
会話で気を紛らわせる 痛みに余裕がある時期に実践
休息とエネルギー摂取 強くなる痛みに備え、寝れるうちに寝て食べれるうちに食べる

1.呼吸法

呼吸法は、痛みの緩和の基本といえます。

呼吸法を実践すると呼吸に集中できて痛みから意識をそらしリラックスを促すことができます。

具体的には、痛みがきたときに息をゆっくり長く吐くようにします。

口を「う」と発声するときの形にして、「ふー」とゆっくり吐くようにすると良いです。

痛みが落ち着いてきたら、産婦さんにとって楽な呼吸をしてもらいリラックスを促します。

痛みが来たときに呼吸を意識していないと、痛みにばかり集中してしまい、余計に痛みを強く感じてしまいます。

呼吸法については、産婦さんに息を「吸うこと」を意識させる必要はありません

その理由は下記です。

陣痛中はできるだけシンプルな言葉かけの方がよい
息をはゆっくり吐くことができれば、無意識的に息を吸うことはできる

意識を呼吸に向けることで、痛みを紛らわせてリラックスさせる効果が期待できます。

陣痛中は、できるだけリラックスして身体の力を抜いて過ごすことでお産が進みやすくなります。

実際、陣痛が強くなってきた産婦さんは、痛みがくると呼吸が荒くなり過呼吸になったりパニック気味になったりすることが多いです。

そうなると、痛みが落ち着いてきてもパニックになったままで荒い呼吸が続いてしまう場合もあります。

陣痛緩和の基本として呼吸に意識を向けていきましょう。

2.ラマーズ法

ラマーズ法は陣痛緩和のための呼吸法です。

ラマーズ法も呼吸に意識を向けることで、痛みの緩和を図ります

呼吸への意識により痛みの不安を和らげることで、痛みを感じにくくする方法であり「心理的無痛分娩法」とも呼ばれます。

ラマーズ法は、お産の進み具合や陣痛の痛みの強さにより、呼吸の方法を変えていきます。

タイミング 呼吸法
痛みがまだ弱い

陣痛が始まったばかり

鼻から3秒程度かけて息を吸い、口から3秒程度かけて吐く
痛みが強くなってきた

お産が進んでいる

「ヒッ・ヒッ・フー」のリズムで呼吸する

特に「フー」で長めに吐く

我慢できない痛みで力が入ってしまう

子宮口は全部開いていない

「フー・ウン」のリズムで、「フー」と口から息を吐きながら、最後に「ウン」と鼻から息を出していきみを逃す

具体的に上記のように行います。

ただ、最近ではラマーズ法を行っている分娩施設は少ないです。

産婦さんにとって一番楽でリラックスできる呼吸方法が良いとされているためです。

私が助産師として働いてきた病院でも、ラマーズ法を推進していたところはありませんでした。

もちろん、ラマーズ法が適している場合もあると思いますが、大切なことは決まった呼吸法を行ってもらうのではなく、その産婦さんがリラックスできる呼吸をおこなってもらうことであるといえます。

呼吸法にとらわれず、産婦さんにとってリラックスできる呼吸を

促していきましょう。

3.ソフロロジー法

陣痛緩和の呼吸法の一つにソフロロジー法があります。

ソフロロジー法も、ラマーズ法と同様に呼吸への意識で痛みの緩和を図る「心理的無痛分娩法」と呼ばれます。

ソフロロジー法は、イメージトレーニングやヨガ、瞑想の考え方を取り入れており、「陣痛の痛みは赤ちゃんに会うために必要なエネルギー」とポジティブにとらえることで、リラックスを促します。

具体的には、陣痛が来たらあぐらで過ごし、できるだけ細く長く、ろうそくをゆっくり消すように息を吐いていきます。

頭の中では、赤ちゃんに会えることをイメージしながら、痛みの波を乗り越えます。

痛みがひけば、通常の呼吸に戻します。

ソフロロジー法を効果的に行うには、妊娠中のイメージトレーニングが重要です。

陣痛が始まってから急に行うことは難しく練習をしておくことで気持ち的にも余裕をもってお産に臨めます

ソフロロジー法はイメージトレーニングをしておくことで、陣痛緩和に生かせる方法。

私自身は陣痛で入院してきた産婦さんにソフロロジー法を勧めたことはありませんが、自ら練習してきていた産婦さんはいました。

その産婦さんは痛みで意識がもうろうとなっていました。

しかし、ソフロロジー法を思い出して実践し始めると、それまで痛みでうなっていたはずが落ち着いた呼吸を行えるようになっていました。

呼吸法の効果を改めて感じられる経験でした。

以上のように、ソフロロジー法は妊娠中からのイメージトレーニングが必要ですが、練習をしてきた産婦さんには効果的な方法であるといえます。

妊娠中からかかわる機会があれば、

ソフロロジー法を紹介してみてもいいですね。

4.マッサージ

マッサージは実践しやすい陣痛緩和方法です。

痛みのある部位をマッサージをすることで、痛みを伝える神経を刺激し陣痛を緩和することができます。

マッサージの方法
  • 手のひらを、腰やおなかなど痛みが強い部位に当てる
  • 痛みがきたら、呼吸のリズムに合わせて手のひら全体で痛みの部位をさするように動かす
  • マッサージの強さは、産婦さんに聞きながら好みの強さで行う

マッサージは呼吸に合わせて行うようにすると効果的です。

また、マッサージの強さは産婦さんに好みを聞きながら調節しましょう。

強さに関して、特に腰をマッサージするときは私たちが思っているよりも強めの方がよいという産婦さんが多いです。

ですが、初めは優しい強さから行って、ちょうどよい加減を聞いたり、訴えや表情をみたりしながら、強さを変えていきましょう。

注意として、頻度は多くありませんが、人によっては痛みが来ているときに触られるのが不快という方もいます。

医療者のかかわりが逆効果にならないように気を付けてください。

とはいっても、陣痛中に助産師として付き添ううえで、マッサージは最も多く行う痛みの緩和方法です。

陣痛に苦しんでいる方にかかわるときに、どうしたらいいかわからないと思ったら、まずは腰のマッサージをしていきましょう。

強さを調整しながら、産婦さんが楽だと思えるマッサージを行いましょう。

5.肛門を圧迫

肛門周辺を圧迫することは、痛みが強くなってきた時期に効果的な陣痛緩和方法です。

痛みが強くなってお産が進んでくると、身体に自然に力が入るようになります。

さらに痛みが来た時に赤ちゃんの頭が下に降りてこようとするため、お尻への痛みを感じることが多いです。

しかし、子宮口が全部開くまでは、力を入れないようにいきみを逃さなければなりません

子宮口全開大までは、いきみを逃して身体の力を抜くことが大事。

肛門を圧迫することで、力を逃しやすく楽に感じられるようになります。

「陣痛といえばテニスボールやゴルフボール」という印象を持つ人は多いと思います。

肛門を圧迫するために、テニスボールやゴルフボールが活躍します。

基本的には、圧迫は手のひらを肛門部に当てて、痛みがきたら手のひらで押し上げるように、グーっと押します

痛みがおさまってきたら、圧迫をやめます。

このときに、手をこぶしにして押してしまうと、手や指の関節や骨が当たり痛みを与えてしまう場合があります。

しかし、肛門圧迫は強い力で行うことを好む産婦さんが多く、手のひらで押し続けることは、圧迫をする側にも負担になります。

そこで、テニスボールやゴルフボールを使用することで、圧迫する人の負担軽減につながります。

また、ゴルフボールよりもテニスボールの方が柔らかいので、テニスボールを使用するほうが強く押したときに余計な痛みを感じさせないで済むことが多いです。

肛門の圧迫は実際の現場でも多く行う陣痛緩和方法であるため、その方法も合わせて覚えておきましょう。

「お尻押してほしい」といわれることは多いです。

医療者でなくとも、立ち合いの家族の方に実施してもらうこともいいですね。

6.温める

痛みのある部位を温めることは、陣痛緩和効果が期待できます。

温めることで副交感神経が働き、リラックスにつながるためです。

温めることを「温罨法」といいます。

生理痛に対しても、おなかを温めると痛みがマシになるという女性は多いです。

痛みがあるときは交感神経が優位であり、身体は緊張状態になっているため、痛みを感じやすい状態になっています。

温めると、血管や筋肉を弛緩させることができて緊張をほぐし、身体をリラックスさせる効果があります。

副交感神経が優位であるということは、痛みの閾値が上がり、痛みを感じにくくすることもできます

交感神経が優位だと身体は緊張状態・副交感神経が優位であるとリラックスした状態

痛み場所は主に、おなかや腰であることが多いですが、どこの痛みがいちばん強いかを聞いてみましょう。

産婦さん自身でも「どこが痛いかわからないけど痛い」という方もいるため、分からないときは腰やおなかを温めてみて、その効果を本人の訴えなどから確認するようにします。

ほとんどの病院には、ホットパックなど温罨法に使えるグッズがあるため、実践しやすい方法です。

ただ、暑がりな産婦さんや夏の暑い時期では不快に感じる方もいるので、「試しに使ってみましょう。」くらいで使用し、産婦さんにケアを押し付けないようにしましょう。

私も、温罨法を行うときは「温めると楽な人もいるので、試してみましょう。いらなさそうであれば、横によけておいてくださいね。」と声をかけて実践するようにしています。

手軽に実践できる方法なので、自身が働く医療機関にどのような温めグッズがあるか確認しておくとよいですね。

産婦さんの好みに合わせて、温めるという方法も取り入れていきましょう。

7.会話で気を紛らわせる

陣痛緩和には、誰かと話して痛みから気を紛らわせるということも一つの方法です。

人と話すことで、リラックスできて痛みを感じにくくする効果が期待できます。

産婦さんは、一人でじっと陣痛に耐えていると、痛みのことで頭がいっぱいで、痛みにより敏感な状態になります。

特に、気を許せる相手と話しながら過ごすことはリラックスにつながります

立ち合いをしているパートナーさんが、どうしたらいいか分からず困っているようであれば、マッサージを説明するとともに、赤ちゃんのことなどお話をしてみるよう促すと良いです。

立ち合いの方がいない場合は、看護師や医療者でも会話をしてみましょう。

陣痛中の方との会話の内容に困るかもしれませんが、赤ちゃんの名前のことや、家族のことなど、本人が話しやすそうな内容で話してみてください

難しく考えず、気軽な会話でリラックスしてもらうことが大事。

注意することは、会話をする時期です。

痛みがまだ我慢できる程度で余裕がある時期に行いましょう。

痛みが強くなってくると、痛みと痛みの間に余裕がなくなってきます

余裕がないときに会話をさせることはリラックスにはならないため、そうなってきたら会話ではなく深呼吸や楽な呼吸を促し、目を閉じて身体を休めることを第一にかかわる必要があります。

陣痛緩和の一つとして会話をするという方法も有効ですが、リラックスしてもらえるかかわりが大切であることを忘れないようにしましょう。

8.休息とエネルギー摂取

陣痛緩和において、休息とエネルギー摂取も大切です。

体力を消耗していくと痛みに対して身体がどんどん弱くなっていきます。

休めるうちに休む」「食べれるうちに食べる」ことを、産婦さんに促しましょう。

特に陣痛が始まったばかりの時期は、痛みと痛みの間の時間が5分以上と長かったり、痛み自体が我慢できる程度であったりします。

その時期にうちに、食事や食べられるものを食べるよう促し、夜間などで寝れていないような方には、合間で少しずつでも寝るようにお伝えします。

痛みが強くなってお産が進んでくると、痛みの合間でも余裕がなくなってくるため、可能なうちに意識的に実践してもらうことが大切です。

陣痛が来ていても、痛みが軽いうちに休息とエネルギー摂取をしてもらうことで、その後の体力温存になり、痛みが強くなってからも乗り越えやすくなります。

陣痛が始まったばかりの段階でもすでに、余裕がないくらい痛みを感じる方もいます

そのような場合は、糖分の補給ができる水分の摂取でもいいので勧めていきましょう。

水分でもエネルギー摂取が難しい場合は、点滴で補うこともある。

特に、初めての出産に臨む産婦さんは初めのうちは、これからどんどん強くなる痛みのイメージが十分にできていません。

今以上の痛みが来て赤ちゃんが生まれてくるのだということを伝えつつ、休息とエネルギー摂取の重要性を伝え、自身でお産を乗り越えられるようにサポートしていきましょう。

産婦さん自身が必要性を理解して、

自分から実施できるようにしていきましょう。

まとめ

看護師さんでも実践できる陣痛緩和方法について解説しました。

どの方法においても大事なことは、産婦さん自身がお産が進む経過をなんとなくでも知っておきその時期に合わせた痛みの緩和方法や過ごし方を知っておいてもらうということです。

しかし、産婦人科で働く看護師さんがかかわるのは、すでに陣痛が始まった産婦さんであることが多いため、「なぜそのような方法や過ごし方が良いのか」と、「なぜ?」の理由も踏まえてお伝えし、実践してもらうようにすると良いです。

産婦さんにリラックスしてもらうことを第一に、ケアの押し付けにならないようコミュニケーションを取りながらかかわってみてください。

今回の内容を実践することで、出産という一大イベントをサポートできて、産婦人科の看護師としてのやりがいをより感じられるようになるでしょう。

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